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「させていただく症候群」が増えている!?これさえ使えば丁寧?指摘される理由と正しい使い方


こんにちは。Webマーケティング部 山際(@crassone)です。
 

 
弊社の運営している【くらそうね解体】(旧:解体工事の匠)【くらそうねエクステリア】(旧:エクステリアの匠)サービスではお客様や工事会社様へ電話でお話をするシーンが多いのですが、社内で聞こえてくる会話の中で「後ほどお電話させていただきます」や「○○をご紹介させていただきます」という言葉が多く聞こえるように感じることがありました。

その時に「~させていただきます」って正しいのかな?と、感じることがありました。

みなさんも日常やビジネスシーンで「~させていただきます」という言葉に違和感を感じたことはありませんか?
 
実は、私だけでなく、社内でも疑問が出た時期がありました!クルーの中でも気になってる人、全然気にしていない人、人によって感じ方が違っていました。社内では、はっきりとした答えが出ないままですが、特別失礼にあたる言葉では無いという判断のもと、個々で気をつけながら業務を行っているのが現状です。
 
そして調べてみたところ、いつから目立ち始めて、多用されるようになったのかがある程度わかりました。
 
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今回のブログは株式会社LIGに所属するライターで、ブログ記事の企画・執筆を担当している菊池良さん(@kossetsu)のブログ記事が読みやすくて、とてもいいなと思っていて、書き方を勉強する為に参考にしながら書いてみます。
参考ブログ:「了解しました」より「承知しました」が適切とされる理由と、その普及過程について
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「させていただく」という言葉への指摘が目立ち始めたのは2010年頃

まず、Web上でいつから目立ち始めたのかを調べてみました。
 
すると、Web上で取り上げられたのは2010年頃だということがわかりました。その原因となったのが、政治家の発言が大きく関与しているようです。
 
【リクエストに回答】「させていただく」が気になる(2014年)
 
2014年の記事ですが、目立ち始めた2010年に書かれた朝日新聞の記事が引用されていました。
この記事を取り上げた記者は朝Pというニックネームで有名な丹治吉順記者が書いたもので、アンケートから世間の声、専門家の意見まで書かれています。少し引用します。
 
当時、約4千人に聞いたアンケート結果です。
 

■「させていただく」は変ですか?[回答者数:4202人]
変だ            19%
どちらかといえば変だ    36%
どちらかといえば変じゃない 29%
変じゃない         16%
(出典: 朝日新聞、「be」2010年9月4日)

いや、見事に意見が割れました。アンケートで「『○○させていただく』という言葉遣いは変だと思いますか」と尋ねたら、「最近の嫌いな言葉第1位」という激しい拒絶もあれば、「昔から使っている。どこがおかしいのか」と擁護する声もあり、正に真っ二つ。言葉って難しい。
(出典: 朝日新聞、「be」2010年9月4日)

世間的にも気になる人と気にならない人の意見が分かれているようです。

 反発する人の拒絶感は強い。
 「へりくだっているようで、上から目線の言葉。経営者などから『この条件でさせていただく』といわれると、逆らうなという強いプレッシャーを感じる」(東京、50歳女性)という声が代表的。「ていねいに見えて、これほど一方的で押しつけがましい言葉はない」(奈良県、78歳男性)、「初めて聞いたときはバカにされているのかと面食らった。公務員や年配の人も使っているが、何と軽薄なと思う」(千葉県、26歳女性)など激しい意見も。
 逆に「違和感があるという意見を初めて知った」(東京、43歳女性)という声も多い。「何の抵抗もなく常時使っている」(神奈川、72歳女性)、「どうおかしいのですか?」(大阪府、45歳男性)などがそうだ。
(出典: 朝日新聞、「be」2010年9月4日)

とはいえ、気になる人はすごく気になる言葉のようですね!
こんな現象が起こるのは何故なんでしょうか。

ちなみに以下の記事は、はてなブックマークが沢山ついていたので多くの方に読まれたものだと思われます。

「させていただく」症候群と誤用の理由(2012年)

「させていただく」の使用例

まずは、言葉について理解しようと思い調べてみました!

させていただ・く[成句]
相手に許しを請うことによって、ある動作を遠慮しながら行う意を表す。「私が司会を―・きます」
(出典:デジタル大辞泉)

大辞泉ではこのように明記されています。
相手に許可を得て、更に敬意を払って使う言葉というニュアンスですね。

冒頭でも例に挙げましたが、「後ほど、お電話させていただきます。」という言葉。電話の向こう側にいる相手に対して「電話かけてもいいですか?」という許可を伺いつつ、謙譲語としてへりくだった言い方です。
事前に交わされた内容にもよりますが、「後ほど、お電話いたします。」でも十分、相手に敬意を払った言い方になると思います。

「弊社の○○をご紹介させていただきます。」新製品発表などの機会に、こういった紹介から始まることがあると思います。少人数で個別に紹介する場合であれば、問題ないような気もしますが、一般的な大衆を前にした発言だとすると、少し違和感があるように思います。
「弊社の○○をご紹介いたします。」の方がスマートな表現な気がします。

「させていただく症候群」と言われる所以


(出典:写真AC)
2010年8月の記事で「させていただく」首相と書かれているほど、鳩山首相や麻生首相が「させていただく」を演説の時に多用していたことで、「させていただく症候群」という言葉が出るようになったようです。
政治家が使う言葉としては、不適切ではないのか?という世間の声があったこと、メディアが首相の自信のなさを表した言葉じゃないかと報じたことが大きな要因になって、今にいたるようです。
「させていただく」症候群(2010年)

「させていただく」という言葉に触れている書籍

調べていくうちに、気になる書籍があったので4冊購入してみました。
少しご紹介しておきます。

『つい口に出る「微妙」な日本語~その言い方は他人にどう聞こえているか~』著者:濱田英彦


濱田英彦(2008)『つい口に出る「微妙」な日本語~その言い方は他人にどう聞こえているか~』ソフトバンク新書

人材育成している株式会社ヒューマンテックの代表をされている濱田さんの著書。コミニュケーション研修や、話し方等、多数の講演会をされている方で、言葉のプロです!そんな方も著書の中で「させていただく」についてこのようにまとめています。

まとめ 何もかも「させていただく」奇妙かな

あまりに多用すると慇懃無礼(言い方は丁寧でも、内心は相手を軽く見ている様子)に感じてしまうので、注意が必要だと、この著書の中では述べられています。

『かなり気がかりな日本語』著者:野口恵子


野口恵子(2004)『かなり気がかりな日本語』集英社新書
 
日本語・フランス語教師でもある、野口恵子さん。日本語に関する書籍を5冊ほど出版されていて、現在は非常勤講師として文教大学や東京富士大学で教鞭をとってらっしゃるようです。

この著書の中から一部抜粋してご紹介いたします。

「いただく」があまりに多すぎて、うるさく感じられる実例を示そう。(省略)句読点も含めてわずか360字ほどの文章の中に、「いただく」が6回(うち、「させていただく」が2回)出て来る。「お願い申し上げます。」も4回だ。
(省略)
実験的に、「いただく」をすべて省いてみる。そして、4度あった「お願い申し上げます」を1度だけにすると、以下のようになる。
(省略)
句読点を入れて220字足らずと、原文の6割に縮まった。敬意もそれほど低くなっていない。

(出典:かなり気がかりな日本語)

詳細の文章が気になるかたは著書をご覧いただくとして、文字数に注目していただきたい。360字が220字と3分の2程度のボリュームになるということです。あまりに多用すると文章も長くなるし、内容もくどいということ。

もう一冊、野口さんの著書で気になるものがありました!

『バカ丁寧化する日本語~敬語コミュニケーションの行方~』著者:野口恵子


野口恵子(2009)『バカ丁寧化する日本語~敬語コミュニケーションの行方~』光文社新書

この著書では帯にも書かれていますが、「させていただく」という言葉についてガッツリ最初から最後まで書かれています。Webで取り上げられるようになった時期とほぼ変わらないのでやはり、注目度が高い時期だったのでしょう。

一部抜粋ですが、野口さんはこのように述べています。

「させていただく」さえつければ丁寧さや謙虚さが表せると思っていると、とんでもない落とし穴があるということだ。
(省略)
たくさん使っている人が減らすには、大変な努力が要る。大変だが、考えて、苦しんで、工夫することで、その人の語彙力と表現力に磨きがかかることは間違いない。

日常的に使っている言葉は習慣になっているので、直していくことは容易ではないですね。自分の言葉の中に何回「させていただく」が出て来るのか数えてみると面白いかもしれません。

『伝える力2』著者:池上彰


池上彰(2012)『伝える力2』PHPビジネス新書
 
こちらは最近、テレビでもよく見かける池上彰さん。ジャーナリストですが、フリーランスとして多方面で活躍されていて著書も多数出版されています。今回はベストセラーになった『伝える力』の続編の中に、『させていただく』について触れている箇所がありましたので、引用いたします。

敬語といえば「~~させていただいています」の多用、あるいは濫用も気になります。「~~します」、あるいは「~~いたします」でいいだろう、と私は内心ではよく思っています。
「させていただく」は謙譲語に分類されますが、「そこでへりくだらなくてもいいだろう」という場面でも、やたらにへりくだって謙譲語を使うことが多い印象を持ちます。
(出典:伝える力2)

場面によって違和感に感じるのは同感です。

電車に乗れば、「ドアを閉めさせていただきます。ご注意ください」のアナウンス。「ドアが閉まります。ご注意ください」で十分、丁寧だと思うのです。「ドアを閉めさせていただきます」に対して、こちらが「イヤだ」と言ったら閉めないのか、と思ったりします。
(出典:伝える力2)

言葉の意味を理解しながら聞いてみると、反論したくなる使い方をしている場面は日常生活にも溢れているように感じます。

【池上彰さん 総選挙ライブでの発言を調べてみました!】

先日、行われた選挙。特番で司会進行していた池上さんの発言の中に「させていただく」って本当に言ってないのか?っと思い、オンデマンドで確認してみました!(確認したくて登録してみました!笑)
約3時間ほどの番組の中で、池上さんの発言では「させていただく」は一回も使ってなかったです!
テレビというメディアを通して一般の聴衆に向けてお話をしているという意識がとても高いように感じました。難しい政治の話ですけど、池上さんの言葉があるからか、すごく勉強になりました!
言葉に注目して見ていたので、気になった場面が2つ!コメンテーターとして出演されていた方と、中継で繋がった政治家の方が「させていただきます」という言葉を使っていたのが気になりました!冒頭に説明した言葉の意味を理解して聞くと、やっぱり少し違和感を感じましたね。

まとめ:目立ち始めた要因は政治家の発言をメディアが取り上げたことか

ここまで調べてきて、多数のWebメディアや書籍に目を通してきましたが、どれも例として多く挙げられているのが鳩山首相、麻生首相の演説で使われた言葉にメディアが反応して、一般市民へも浸透していったようです。
 
そして、政治家やアナウンサーの言葉は世代を超えて耳にする機会があるので、若者たちがすぐに吸収しているのが現状ではないかと思います。
また、現代の日本人は遠慮しがちだったり、嫌われたくないという心理が無意識に働いているのも、要因のひとつではないかと感じます。
 
ジャーナリスト、ノンフィクションライターでもあり、書籍も多数出版されている、川井龍介さんの書いた連載コラム『鏡の言葉』の中でも全13回のうち3回に「させていただきます」についての内容が取り上げられていました。
 
第2回 「させていただきます」ウイルスの蔓延(2009年1月)
第5回 なんでも「~させていただく」社会の裏にあるもの(2009年4月)
第9回 「させていただく」問題を総括する(2009年10月)
 
川井さんは、ここで「“ウィルス”はマニュアルにも“感染”した」「だれにも嫌われたくない心理」「首相もアナウンサーも・・・」という見出しで書かれています。ウィルスに例えて感染としている記事に、妙に納得感がありました。知らない間に日常化されて無意識に広がっているんですよね。

おわりに

長々と書いてきましたが「させていただく」という言葉の意味を考えると相手に許しを得て、敬意を払うことなので、場面によって使い分ける必要がありそうですね。あまりに多用していると、まわりくどいし、文章が長くなってしまうので、文章の中では簡潔になるように使うことがスマートではないでしょうか。

個人的な意見としては「話し手の意味が相手に伝われば、自由な使い方をしてもいい」と思っています。
あまりにもふんわりした言葉で逃げ道を作るような言葉を国のトップに立つ人には使って欲しくないですね。

国の機関である文化庁から出ている「敬語の指針」(第3章 第2 6 40頁)の中でも『「させていただく」の使い方問題』として書かれていますし、自分の言葉で言い切って欲しいものですね。

メールなど文章を書き出す場合は、声に出して読んでみたり、「~します」や「~いたします」で代用してもおかしくないかを確認するとよさそうですね。

「言葉の意味を理解して、場面に合わせて使いましょう」というざっくりした結論で終わります。

社内でも言葉の使い方に注意をしながら、より良いサービスの提供に励みたいと思います。
 

この記事を書いた人

山際有香

山際 有香

2013年6月入社。解体事業部、マーケティング部を経て2019年6月から人事広報部にて広報を担当しています。2016年に産休・育休を取得し、一人娘を育てるワーキングマザーです。主な業務は、社内の情報を収集しながら広報ネタを考え発信することです。プライベートではヨガインストラクターとして活動しながら健康を意識した、豊かな暮らしを目指しています。

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