本ブログについては2020年8月にWantedlyストーリーで公開された夢の国で“人”の大切さ学んだCHROが人事として大切にしていることの記事を転記しています。
こんにちは。クラッソーネCHRO(人事広報責任者)の宮田です。
私が名古屋の建設テックベンチャーであるクラッソーネにジョインしてから、早くも1年半以上経ちました。これまで大手企業中心のキャリアだった私にとって、スタートアップフェーズのベンチャー企業は初めての経験ですが、事業や組織の成長スピードが非常に速く、人事としても学びの多い楽しい日々を過ごしています。このたび、入社して初めて自分の部署のメンバーを正社員として新規採用することにしたので、面談の際の自己紹介がわりに、これまでの私の人事ストーリーを書こうと思いつきました。(追記:無事10月に新メンバーが入社しました!)
目次
- 人の心身の健康を追求した学生時代
- ビジネスとホスピタリティの両立に奮闘した若手時代
- 夢の国で学んだ”人”の大切さと人事の使命
- 名古屋で経営理念の大切さを痛感
- スタートアップのCHROとして挑戦の日々
- これからの挑戦について
人の心身の健康を追求した学生時代
学生時代、今のような人事キャリアを歩むことになるとは、全く想像もしていませんでした。大学時代は心理学を専攻し、勉強が楽しくて大学院に進学して研究者になろうと考えていました。そもそも、心理学を専攻したきっかけは高校時代に遡ります。生まれつきお腹を壊しやすく、学校生活の中でもたびたび腹痛に悩まされていましたが、高校時代に通院した大学病院で「過敏性腸症候群」であることを教えてくれた医師との出会いが、私を心理学に導いてくれました。その医師は、人間は薬では治らない体質的な病気があり、その病気とうまく付き合っていく生き方があることを教えてくれました。「薬に頼らずに病気を治す本」という本を渡してくれたその医師は「宮田さんみたいな人は、心理学を勉強したらいいんじゃない」とアドバイスをくれたのです。
ちょうど進路に悩んでいた私にとって、自分の心の持ち方と健康との繋がりのヒントをくれそうな心理学は魅力的に映り、メンタルヘルスについて学べるゼミのある大学に進学しました。大学で「物事の捉え方や対処行動と心理的健康に大きな関係がある」ことを学んだ私は、この認知行動心理学の魅力をもっと追求したくなり、大学院に進学しました。ところが、研究者を目指して進学した大学院では、研究活動と人の心身の健康に役立つことの距離感にギャップを感じてしまい(研究者として才能がなかったとも言う…)、修士課程を修了した後は一般企業に就職することを決めました。
ビジネスとホスピタリティの両立に奮闘した若手時代
新卒で入社したのは第一志望だった人材業界の企業で、希望通り人材紹介事業の法人営業担当になりました。「人のキャリアの節目に深く関われる」と志望した人材紹介業界での社会人1年目に、社会の洗礼を浴びることになりました。というのも、人材紹介事業では、自社の登録者が担当企業に転職しなければ一円も稼げないので、必然的に「毎月●名転職者を決めなければいけない」という目標になりますが、社会人1年目で企業や業種、職種のこともろくに理解できていない中で、自分が一度も会ったことがない候補者を担当企業に採用してもらうということは、難しく感じられたからです。最初は負けん気でがむしゃらにやっていましたが、数字に追われながら、私がやっているこの仕事は本当に企業や転職者のためになっているのだろうかと、実感が湧かずに悩むこともありました。(今思えば未熟な新人時代故の悩みだったと思います。)
2年目に異動し転職サイトのリサーチ業務に従事してからは、「顧客にとって価値のあるサービスは何か?」を常に考えながら、登録者数を増やすための施策を日夜考えては試していました。そして経営陣やマネジメント陣とサービスブランディングについて議論をしながら「ビジネスとして短期的な利益を上げることと、顧客を幸せにする価値あるサービスを提供することの両立をどう図るべきなのか」悩みました。短期的な利益を追うだけでは、本当に顧客を幸せにするサービスは実現できないし、ホスピタリティだけで利益を稼げない、というジレンマをどう解決すればいいのか?と社会人2~3年目の私は日々考えていました。
そして、自分なりに情報を収集していた時に出会ったのが、ディズニーランドというビジネスでした。本家アメリカのディズニー・インスティテュートが書いた「ディズニーが教える お客様を感動させる最高の方法」という本を読んだときに、謎が解けた気がしました。経営、サイエンス、アートのそれぞれの視点でやるべきことをやれば、ビジネスとホスピタリティは両立できるのではと思いました。運命のいたずらとしか思えませんが、魔が差して、その時たまたま中途採用をしていたオリエンタルランド社の採用選考を受けたところ合格し、学べるチャンスを神様に与えてもらった!と直感して転職しました。
夢の国で学んだ”人”の大切さと人事の使命
皆さんご存知の通り、東京ディズニーリゾート(R)の運営において、人(キャスト)の存在が最も大切な存在といっても過言ではありません。キャストのおもてなしによって、ディズニーのサービスが支えられているだけあって、人材育成の哲学や仕組みが明確でよくできています。たまたまキャストを担当する人事部に配属された私は、ここから人事としてのキャリアを歩むことになりました。オリエンタルランド社で学んだことは数えきれません。ただ最も大きな収穫を強いて言えば、ビジネスにおける”人”の大切さと、人事という役割の大きさ(使命)を学んだことです。
キャストと接して驚いたのは、時給制の仕事でも「所詮アルバイト」と思って働いているキャストはほぼ皆無で、キャストという仕事に誇りとやりがいを感じて、活き活きと働いているキャストばかりだったことです。「Guest’s happiness is my happiness(ゲストの幸せが私の幸せ)」という言葉があるのですが、そう感じながら働くキャストは、大変な環境でも笑顔で明るいエネルギーに溢れていました(もちろん人間なのでそうでない時もありますが)。これは教育だけで培われるものではなく、「パークという好きな場所で働ける」という喜びからくるものだと感じました。つまり、ゲストを大切にして良いサービスを提供した結果ファンが増え、ファンになったゲストがキャストになり、またゲストをファンにする好循環が生まれているのです。顧客も従業員も人であり、人を大切にすることはビジネスの根幹であることを感じざるを得ませんでした。そしてキャストが働きがいを感じられ、ゲストにいいサービスを提供できる環境をつくることが、黒子である人事の大切な役割だと痛感しました。
人事として試されたのは、2011年3月11日に起きた東日本大震災の時です。パークも一部被災し、また節電要請や自粛ムードもあり1ヶ月半ほど休園しました。開園以来初めての被災による休園で、人事としての対応マニュアルもなく手探りな状況でした。私が真っ先に心配したのは、約2万人のキャストのことでした。時給制のキャストは仕事がないと給与が支給されなくなります。いつまで休園するかが見えない中で、休業補償をどのように行うのか、上司に確認しましたが上層部からの指示を待つように言われました。当時キャストの人事制度の運用を担当していた私は、震災から1週間経っても上層部からの指示がないことに業を煮やし、自ら動きました。休業補償の仕組みをゼロから考えて、各部署の人事担当責任者を回って意見を調整して制度案をまとめました。また部長に協力をお願いして社長まで稟議を上げてもらい、無事1週間ほどで億単位の稟議が通りました。
今思えば人を大切にする会社だからこそ、協力的な部署ばかりでしたし、大企業でもスピーディーな判断をしてもらえたと感謝しかありませんが、当時は30そこそこの役職もない一社員だったので、会社に大きな影響を与える仕組みを自ら考え、全社を巻き込んでいくプロセスは、孤独との戦いでした。2万人のキャストの雇用を守り、安心してまたパークが再開したときに働いてもらい、ゲストをおもてなししてほしいという一心でしたが、うまく制度を運用できるか、この補償だけでキャストの離職が防げるのかも不安でしたし、収入が途絶えた会社のお金を使うことへの成果への責任も感じました。結果的に1ヶ月半でパークは再開し、ほとんどキャストが離職せずに再開したパークを支えてくれて、本当に安堵しました。この経験が、人事は経営と従業員の間に立って、常に全体最適を考えながらリーダーシップをとって判断していかなければいけないと、人事としての使命感を感じた原体験になりました。
名古屋で経営理念の大切さを痛感
その後結婚を機に夫の仕事の都合で愛知県に移住しました。名古屋で最初にご縁をいただいた会社では、会社の経営理念や存在理由の重要性を痛感する経験をしました。子会社という立場もあり、自社の裁量で自社のミッション(経営理念・存在理由)、ビジョン(事業上の方向性)を描けず、ミッションやビジョンが不明確なまま舵取りをしなければいけない時期を経験しました。仲間にも勤務条件にも恵まれていたものの、会社全体に「無力感」のようなものが漂っていました。人事として組織や従業員の士気を高めるためにあれやこれやと奮闘しましたが、何をやっても根本の「会社の存在理由が不明確」という壁にぶつかりました。このとき私自身にとって、人事として働くうえで「経営理念が明確で共感できるもの」であることが最も大事なことだと気づきました。
左:MyMission宣言の様子 右:MVVトークの様子
クラッソーネと出会ったのは、そんなタイミングでした。知人を通じて人事の募集を知り、ホームページを見た瞬間、「豊かな暮らしで人々を笑顔に」というミッションに心が動いたのを覚えています。そこに書かれていた「豊かさ」への考え方は、一企業の理念を超えて人類にとって普遍的な理念のように思えました。経営陣とも面談や選考を通じて会話をする中で、本気でミッション・ビジョン・バリューを実現したいという本気度がヒシヒシと伝わってくるとともに、ここであれば自分がつくっていきたい「人を大切にすることを起点とし、顧客を幸せにするサービスを創り、事業・組織としても大きく成長していく、目指す世界観をつくっていける」と直感的に感じました。
スタートアップのCHROとして挑戦の日々
不思議なご縁でスタートアップのCHROとしてのキャリアをスタートしたのですが、そこからは無我夢中のチャレンジの連続でした。まず最初にとりかかったのは、CXOクラスの採用とクルー1人1人との1on1を通じた組織課題の把握と組織開発・制度運用のアプローチによる改善。その後就業規則の刷新、新卒採用の立ち上げ…とやることは目白押しでした。半年後からは、全く未経験の広報をほぼゼロから立ち上げながら、あらゆる人事業務をプレイヤー、マネジメントとして推進しています。スタートアップの人事部長というのは、大企業で言う平社員の仕事から経営幹部の仕事まで、全部するんだなぁと実感しました。でも私にとっては、人事広報業務を一通り自身の裁量でできることが楽しいですし、何よりも、会社の「ミッション」「ビジョン」「バリュー」が明確でぶれないので、マネジメントとして非常に判断しやすく、また、施策の1つ1つが会社のミッション、ビジョンに繋がっていることや会社が日々成長していることを実感しながら仕事ができることに、やりがいを感じています。
左:エンジニアの世界を学ぶためにRailsGirlsに参加 右:採用イベントに出展
今は事業の1→10フェーズなので、採用の強化とコーチングや組織開発手法を通じたクルーのオンボーディング、成果にコミットするカルチャー作りに力点を置いています。「相思相愛採用」の取り組み、コロナ禍のリモートワーク切り替え、対話とクルーの豊かな暮らしを重要視した人事施策など、徐々にメディアに取り上げていただくことも増えてきて嬉しいです。
▼クラッソーネの挑戦については、ぜひこれまで公開してきた「ブログ」をお読みいただけると嬉しいです!
ところで、少し余談ですが、人事の役割は、意外とビジネスパーソンに知られていないと思うんです(「採用とか研修とか…?」ってたいてい言われます…苦笑)。当の人事担当ですら「人事って一言で言うと何?」と聞いてみたら、答えられない人が多いのではないかと思っています。私は「採用担当です」「研修担当です」「人事制度企画です」といった、実務としての役割で認識している人事パーソンが多いのではないでしょうか。私は人事とは、「会社のミッション・ビジョンを達成するためのチームを作る」役割だと思っています。採用も研修も制度も、そのための手段にしか過ぎません。経営課題を把握して、解決へのアプローチが、採用なのか、研修や組織開発なのか、制度なのか…を考えることがセオリーです(結構な割合で、人事施策の前に会社のミッション・ビジョンが不明確なことや、チームの関係性の問題が真因だったりしますが…)。でも大きい企業の縦割りの人事組織では、各セクションが存在感を発揮したがるので(笑)、施策ありきになってしまって本質的な課題に着手していないということが結構あります。(だから「人事はいらない」とか「人事は面倒な仕事ばかり増やす」とか言われがちです。そうでなくても、ただでさえ嫌われ者ですが…)
スタートアップのCHROは、人事領域のすべてのセクションの平社員から幹部まで自分ですので(経営陣が任せてくれる度量があれば)ほぼ裁量100%!そして、セクショナリズムや上司のせいにもできずに(笑)人事面での経営の成果は全て自分の成果にかかっています。なんてエキサイティングなんでしょう~!本気で人事で成果出したい人には、スタートアップのCHROキャリアお薦めですよ!!(という私は、まだ大した成果を出せているわけでありませんが…挑戦中です!)
これからの挑戦について
幹部の集合写真
クラッソーネのミッション、ビジョンの実現に向けた現在地は、まだ山に例えると1合目くらいなので、これからが本番で、挑戦のスタートラインに立ったに過ぎません。私の現在の挑戦は、クラッソーネのバリューを体現し、ミッション・ビジョンを達成するための全社としてのチーム作りを全力で行うことです。そのために、人事チームとしてもさらに進化していきたいと考えています。人事は「会社のミッション・ビジョンを達成するためのチームを作る」のが役割であり、「顧客や従業員とその家族を幸せにするための存在」だと思っています。その役割を全うするためには、常に経営と従業員の間、社外と社内の間に立ち、双方に寄り添いながらも、葛藤の中でスピーディーに全体最適の判断をし、行動していくことが求められます。そんな愛の力を発揮しながら一緒に挑戦していただける方に、ぜひチームにジョインしていただきたいと考えています。ご縁を楽しみにしています!